安部公房『砂の女』新潮文庫、1981年

砂の女 (新潮文庫)

砂の女 (新潮文庫)

「―罰がなければ、逃げるたのしみもない―」この本の題辞を読了後に思い返すと本当に恐ろしくなる。主人公の心はまさに人間の姿を象徴しており、私自身がこの物語の主人公の様にならないと言い切ることなどとても出来ない。弱い存在であることが、人間であることが、怖くなる。それでいて、主人公の男が妙に懐かしく、また愛おしい。私の心は本当に私の心なのだろうか。そんな気分にさせる1冊。