江戸川乱歩『江戸川乱歩全集 第4巻 孤島の鬼』光文社文庫、2003年

江戸川乱歩全集 第4巻 孤島の鬼 (光文社文庫)

江戸川乱歩全集 第4巻 孤島の鬼 (光文社文庫)

  • 孤島の鬼
    • 当時「畸形」と呼ばれた人達の悲哀と彼らに対する社会の視線、そして其処から生まれる嫉妬、憎悪、狂気。其れらが生み出すモノとは何か。畸形、狂人、同性愛と乱歩ワールド全開だが、途中から冒険物っぽくなってしまい私としては乱歩独特のグロテスクな魅力が半減した気がして少々興醒めした。私の好きな乱歩作品に明るい日差しは必要無いのだ(明智小五郎や少年探偵団シリーズは別として)。それでも、乱歩長編の最高傑作の一つに数えられるだけのことはあり、秀ちゃん吉ちゃんと箕浦の関わりなどは恋愛の中にも何かしら奇妙な含みを持つ感じがして、流石だなと感じた。兎も角、乱歩に長編は辛いんだろうな、とつくづく感じる。
  • 猟奇の果
    • 本作は前半「猟奇の果」と後半「白蝙蝠団」に分かれている。前半と後半で全く毛色が違い、後半には予期せぬ形で明智小五郎が登場する。連載上の問題で物語を引き延ばさざるを得なくなり、前後半に話を分けて後半を明智の謎解き物に変身させてしまったという事情があったようだ。作家って大変だな。尚、本書では「白蝙蝠団」の後に「もう一つの結末」が収録されており、その名の通りアナザーエンディングが書かれている。前半の筋からすると「もう一つの結末」の方がしっくり来る。書きたかったのはこちらなのだろう。「白蝙蝠団」は前半の「猟奇の果」とは別の話と考えた方が自然だという位にちぐはぐな感じがする。(少なくともこの時期の)乱歩は長編が苦手なのだと確信する作品と言える。