レオポルト・フォン・ザッヘル=マゾッホ『毛皮を着たヴィーナス』河出書房新社
- 作者: L・ザッヘル=マゾッホ,種村季弘
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2004/06/20
- メディア: 文庫
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作者の性癖と深く重なっていたからかも知れないが、本作からは情景や感情(愛、崇拝、憧憬、快楽、惑溺、嫉妬、憎悪、狂気)が限りなくリアルに押し寄せて来る。異常性癖として捉えられがちなマゾヒズムを個人の内面世界をひたすら緻密に描くことで芸術、或いは宗教の域にまで高めているのである。私は本作を読んで素直に「美しい」と感じた。無論、愛の在り方の1つとして、である。但し、私自身そのような性癖を持ち合わせていないのでゼヴェリーンと同じ快楽を感じることは出来ないだろうが。それを残念だとさえ思わせてしまうほど、本作は傑作だと思う。