アガサ・クリスティー『ヘラクレスの冒険』早川書房

1947年発表。ポアロが引退前に自らのクリスチャンネーム、エルキュール(フランス語読みで「ヘラクレス」)に因んで、ギリシャ神話にある「ヘラクレスの12の難業」になぞらえた事件を解決するという短編集。
私はクリスティーの作品は長編の方が好きなので、短編を読むと短編でも纏まる様に事件の規模もコンパクトに書かれているといった印象を受ける。クイーンの『Zの悲劇』の様なこじ付け感はないが、実際のヘラクレスの難行を考えると「そんな大層な」と思わずツッコミたくもなる。個人的に面白かったものを挙げるならば『エリマントスのイノシシ』『アウゲイアスの大牛舎』『ケルベロスの捕獲』辺りだろうか。後期クリスティーのアイデアとユーモアが大いに感じられる作品だと思う。