森博嗣『冷たい密室と博士たち -Doctors In Isolated Room-』講談社文庫

冷たい密室と博士たち (講談社文庫)

冷たい密室と博士たち (講談社文庫)

1996年発表の文庫化。犀川創平と西ノ園萌絵、「S&Mシリーズ」の第2作。作者が実際に一番最初に記したのは本作で、刊行順とは異なる。大学の夏休み期間中に1週間ほどで書き上げたらしい。全国の遅筆作家とその担当編集者にスピードを分けてあげて欲しいものだ。それとも著作のスピードとはその位で平均的なのだろうか。
極地研という専門研究施設の中で複数の殺人事件が起こる。名前の通り極地条件の気候下で起こる現象をシミュレートする施設で、巨大な冷凍庫のようなものだ。ディレクトリ、パス、UNIX、root権限、などPCの知識の無い人間には意味の分からない単語も出て来るが、適当に解説されている。ニックネームに動物の名前を使っているというのが可愛らしくて良かった。因みに私はこういった施設が大好きなので興味深く読んだが、実際N大学に極地研なるものは存在しないらしい。ところで、「冷たい」という割に犯人も動機も十分熱い。また、探偵が犯人に狙われるシーンがある小説なんて久し振りに読んだのでそれを読んで熱いと思っただけかも知れない。前作に比べてそこまでのインパクトは無いものの、かなりの佳作だと思う。